小児皮膚科

子どもに多い症状、疾患

アレルギー

私たちの体には、細菌やウイルス、寄生虫など病気を起こす微生物や異物などから体を守るために「免疫」という仕組みがそなわっています。この免疫の働きが、環境や生活習慣の変化によって異常を起こし、くしゃみ、鼻水、発疹、かゆみ、せきや呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態が「アレルギー」です。
アレルギーには食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、薬物アレルギーなどたくさんの病気が含まれます。かつては食物アレルギーがあるお子さんがアトピー性皮膚炎を発症すると考えられていました。しかし近年は、しっしんがありバリア機能が低下している皮膚から食物が体に入り込むことによって、食物アレルギーが発症するという仕組みが分かってきました。

治療

子供の食物アレルギーに関して、母親が妊娠中や授乳中に特定の食物を除去しても予防効果はないとされています。乳児に対して特定の食物の摂取開始時期を遅せることも、食物アレルギーの発症リスクを低下させることにはつながりません。自己判断や血液検査の結果だけを根拠とした食事制限は行わず、医師による正しい診断のもと最小限の食事制限を心がけましょう。

乳児湿疹

赤ちゃんに生じるしっしんを総称して乳児湿疹と呼びます。生後2週~数ヶ月の赤ちゃんはさまざまな原因でしっしんを起こしやすく、区別しなければならない病気として接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、白癬、皮膚カンジダ症、ネザートン症候群、ウィスコット・オールドリッチ症候群など多数あり、赤ちゃんの皮膚トラブルは皮膚科を受診することをおすすめします。

治療

ステロイドの塗り薬で治療します。赤ちゃんの肌はとても敏感です。症状が改善しても保湿のスキンケアを欠かさないようにしてください。

おむつかぶれ・オムツ皮膚炎

おむつかぶれはおむつをしている乳幼児の股やお尻が、おむつや尿中のアンモニア、細菌がつくる皮膚刺激物質による刺激によりしっしん反応が生じると考えられています。カンジダが寄生して生じる皮膚カンジダ症と区別が重要で、正確な診断には皮膚科医による真菌顕微鏡検査が必要です。

治療

軽症であれば、おむつ交換時に濡れタオルで局所を清潔にするように努めることで治ります。アルコールやパラベンなどの防腐剤入りのお尻ふきは刺激が強いのでおすすめしません。ただれ、赤みが強い場合はステロイドの塗り薬で治療します。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は日常診療で皮膚科医が頻繁に診察する病気です。アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみを伴うしっしんで、患者さんの多くはアトピー素因を持っています。アトピー素因とは、「本人または家族に、喘息やアレルギー性結膜炎、鼻炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれかの病気、あるいは複数の病気の方がいること」「IgEというアレルギーに関わる抗体(免疫グロブリン)をつくりやすい素因」のことをいいます。
アトピー性皮膚炎は赤ちゃんの時期から発症し、多くは年齢とともに軽快しますが、大人になっても症状が続く難治な患者さんもいらっしゃいます。顔やくび、ひじの内側、ひざのうらなどに左右対称性にかゆいしっしんができます。患者さんの多くは乾燥肌で皮膚のバリア機能が低下しており、そのため少しの刺激で皮膚が過敏になりしっしんができやすくなると考えられています。

治療

アトピー性皮膚炎の治療の目標は、日常生活に支障がなく、薬も必要としない状態を維持することです。まずステロイドの塗り薬で皮膚炎の症状を速やかに抑えます(寛解導入療法)。「ステロイドは副作用が怖い」と思われるご家族もいると思いますが、ステロイドの塗り薬は、飲み薬のような全身的な副作用は少なく、正しく使えば効果的で安全なお薬です。非ステロイド系抗炎症薬外用治療の有効性は乏しく、副作用を考慮すると使用はおすすめしません。皮膚を清潔にし、入浴後はワセリンやヘパリン類似物質の外用薬で保湿のスキンケアを行います。
大学病院勤務時代に多くの経験を積んでいます。不安があれば何でもお尋ねください。アトピー性皮膚炎は赤ちゃんの頃からしっかり治療することが大切です。しっしんはステロイドの塗り薬で治療し、よくなってからも保湿のスキンケアを続けて健康な皮膚を維持しましょう。最近の研究では、赤ちゃんの時期から保湿剤をしっかり塗ることでアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下することがわかっています。

じんましん

じんましんは、皮膚に存在する肥満細胞という免疫細胞から放出されるヒスタミンなどの物質により、一過性に血管の拡張、皮膚の浮腫が生じ、かゆみや赤み、地図状に皮膚がわずかに盛り上がるといった症状が起こる病気です。問診やアレルギーテストで誘引が特定される場合もありますが、約70%は誘引が特定できません(特発性じんましん)。通常数時間で症状はあとかたを残さず消失するので、皮膚科を受診したときには全く症状がないことも稀ではありません。携帯電話のカメラで症状の記録を撮って受診いただくと診断の手掛かりになります。
じんましんに呼吸困難、血圧の低下などショック症状を合併するものをアナフィラキシーといいます。小麦や甲殻類など特定の食物を食べた直後に運動することによって起こるアナフィラキシー(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)もあります。

治療

誘引が特定できればそれを避けることが大切です。通常は飲み薬(抗ヒスタミン薬)での治療が一般的です。抗ヒスタミン薬での治療が無効で毎日症状がでる患者さんには、4週おきの注射薬(抗IgE抗体:オマリズマブ)での治療も検討します。アナフィラキシーを伴う重症例では、アドレナリンやステロイドの全身投与を行います。

あせも・汗疹

いわゆるあせもは、汗の管がつまってしまい周囲の組織に漏れ出すことで小さな水ぶくれができる病気です。

治療

高温・多湿な環境をさけ、皮膚を清潔にすることで自然に治ることが多いです。赤みの強い場合はステロイドの塗り薬で使用することもあります。

虫さされ

カ、アブ、ブユ、ノミ、ハチなどの昆虫に刺されて生じる皮膚炎の総称を虫刺症(いわゆる虫さされ)といいます。いずれも虫のもつ毒物や、分泌物へのアレルギー反応により、症状が引き起こされます。

治療

刺された部位をかきむしって、二次感染を生じ、とびひになるお子さんがいらっしゃいます。かゆみを和らげる飲み薬(抗ヒスタミン薬)、腫れ、赤みを鎮める塗り薬(ステロイド)で治療します。野外活動時、公園や園庭で遊んでいる時に虫に刺されることが多いので、長袖、長ズボンを着用するなどできるだけ肌を露出しないようにしましょう。カ、アブ、ブユ、マダニには虫除け(忌避剤)で刺されないように予防しましょう。有効成分イカリジンを含有する虫除け(忌避剤)はお子さんにも安全に使用できます。

とびひ・伝染性膿痂疹

黄色ブドウ球菌や溶連菌が皮膚の表面に感染してカサブタや水ぶくれを生じる病気です。しっしんや虫さされ、すり傷のある部位に細菌が感染し、増殖して発症します。夏に多く、乳幼児に好発します。お子さんがさわりやすい鼻や耳に拡大していることが多く、診察の際にしっかり確認させていただきます。

治療

黄色ブドウ球菌あるいは溶連菌が原因ですので抗生物質で治療します。軽症であれば塗り薬で治りますが、飲み薬で治療することをおすすめします。最近は抗生物質が効きにくい細菌(耐性菌)によるとびひが増加しており、経過と原因菌の抗生物質感受性を加味して治療にあたります。

水いぼ・伝染性軟属腫

伝染性軟属腫ウイルスの接触感染によって感染します。中心がくぼんだ半球状の小さなブツブツです。まわりにしっしん(軟属腫反応)ができることがあります。アトピー性皮膚炎のお子さんにできることが多いです。

治療

ピンセットでつまんで水いぼの内容物を圧出します。小さなお子さんの場合は、痛みを和らげる麻酔のテープを貼って1時間後に治療します。水いぼは治療しなくても自然に治りますが2年ほどかかる場合もあります。アトピー素因のあるお子さんに多く、保湿のスキンケアを行うことは大切です。

手足口病

夏に乳幼児に流行します。口の中に口内炎のようなただれ、手のひら、足のうらに小さなみずぶくれができる病気です。原因となるウイルスは複数あり、そのため何回も罹患する患者さんがいらっしゃいます。最近はコクサッキーウイルスA6型による手足口病が流行しており、このウイルスによる手足口病はすねやおしりにも症状がみられます。水ぼうそうと区別が難しいので、皮膚科を受診することをおすすめします。完治後、2ヶ月くらいして爪が白くはがれてくることがありますが心配はありません。

治療

手足口病を起こすウイルスに対する効果的な治療薬はありません。発熱があれば熱冷ましの飲み薬など対症療法を行います。発疹だけで元気であれば登園を控える必要はありません。

麻疹・はしか

麻疹ウイルスの空気感染により感染します。0歳~1歳の子供に多い病気です。

治療

麻疹ウイルスに対する効果的な治療薬はありません。発熱があれば熱冷ましの飲み薬などの対症療法を行います。熱が下がって3日経っていれば登園してかまいません。麻疹風疹混合ワクチンは予防に有効ですので必ず受けましょう。

風疹・ふうしん

風疹ウイルスの飛沫感染により感染します、熱がでてほっしんを生じますが麻疹(はしか)よりも早く消失しますので「三日はしか」と呼ばれます。耳の後ろのリンパ節が腫れるのが特徴です。妊娠中に感染するとお腹の赤ちゃんに異常(先天性風疹症候群)をきたすことがあるので注意が必要です。

治療

風疹ウイルスに対する効果的な治療薬はありません。発熱があれば熱冷ましの飲み薬などの対症療法を行います。発疹が消失すれば登園してかまいません。

水痘・水ぼうそう

水痘帯状疱疹ウイルスに初めて感染した際に発症します。いわゆる水ぼうそうです。発熱とともに顔を含め身体中に発疹がでます。初期は虫さされと区別が難しいですが、頭の中にも症状がでるのが水ぼうそうの特徴です。以前は視診だけで診断していましたが、最近では優れた検査キット(デルマクイックVZV)があり正確な診断が可能になりました。

治療

乳幼児の場合、自然に治りますが、あばたのような後を残すこともあり飲み薬で治療した方が良いでしょう。水痘帯状疱疹ウイルスは非常に感染力の強いウイルスなので空気感染します。通常のマスクでも感染は防げません。全ての発疹がかさぶたになるまで登園はできません。1歳児の水ぼうそうワクチンの予防接種は必ず受けましょう。

アタマジラミ症

シラミ症はシラミが人に寄生し、吸血することでアレルギー反応を生じかゆくなる病気です。寄生する部位によりアタマジラミ症、コロモジラミ症、ケジラミ症に分けますが、それぞれ別のシラミです。アタマジラミ症は頭部の接触、ヘアブラシ、帽子の共有で感染し、家族間、幼稚園や保育園、学校で集団発生がみられます。

治療

市販のフェノトリンパウダーやスミスリンシャンプーで治療します。最近スミスリンの効かない、耐性アタマジラミが増加しており、治療に長期間かかる場合もあります。

乳児血管腫

生後2~3週以内に発生し、その後急速に盛り上がってきます。表面が顆粒状で紅いコブのため、以前はいちご状血管腫と呼ばれていました。

治療

以前は有効な治療法がなく、自然に消えるのを待つしかありませんでした。未治療の患者さんの最大60%に後遺症が残るとされ、近年では早期からプロプラノロール内服療法が行えるようになりました。